2006年01月22日

『マリア様がみてる 未来の白地図』 今野緒雪 / 集英社コバルト文庫

マリア様がみてる―未来の白地図

表紙で祐瞳キタコレ!
でも瞳子ちゃん宇宙人みたいだなー。典型的ツンデレビジュでまぁ良いけれども。

登場人物紹介の乃梨子の肩書きが、『薔薇ミル』以降「リリアン女学園一年生」になっているのはなぜ??? れっきとした白薔薇のつぼみでしょうが。


マリみてレビュ書くの初めてだから基本属性→
元々蓉子さまラヴで姉妹としては祥祐命。生粋の紅っ子。でもDD。現・在校生の中では祐巳担で、祐巳が幸せなら幸せ。可南子ちゃん問題が片付いてからは、祥祐が切なげな方向に向かっていることもあり、祐瞳に激しく思い入れ中。令祥や由祐もシンメとして好き。福沢姉弟萌え。蔦子さん好き。蔦笙をもっと蔦笙を…! 静祐の同志を捜し求めていますどこかにいらっしゃいませんか。なんかいろいろ用語混じってますが。

さて。
祐巳の妹に瞳子ちゃん、というのはもう既定路線で、可南子ちゃん問題がああいう形で片付いたあとは、「どんな風にふたりが姉妹になるか」に焦点が移っているわけですが。
祐巳は祥子さまの卒業という儀式を目前に控え、あー生徒会選挙を経て薔薇さまになるのが先か、とにかく不安定な状態で、デリカシーのカタマリみたいな瞳子ちゃんとどう歩み寄っていくのか。
これまで描かれたどの姉妹誕生エピソード(祥祐、聖志、志乃、蓉祥)よりも、苦しさが漂う展開になっています。白は両方切ないんだけど季節が春だったからな。
マリみてはほぼ季節の通りに発行された文庫が非常に多いわけだけど、『未来の白地図』はこの寒い冬にしっくりはまる、ちくちくするような一冊でした。


以下ネタバレ





ばかばか祐巳のどんかーーーん!!ヾ(>д<)ノ 時機を選ぼうよ! そりゃ乃梨子もキレるよ!
瞳子ちゃんは難しい子だ。そして子どもだ。小中学生ほどじゃないけど、高校生の一年差は大きい。
祐巳は元来が強い子なんだから、がんばれ。蓉子さまの言葉を借りれば、「包み込んで守るのが姉、妹は支え」。
ま、ここで切ってくれたほうが連載小説としては面白いけども。
由乃さんと菜々ちゃんは特に進展なし。令由も一山越えたことだし、次刊で祐瞳が片付くとして…さてどうなるか。

以下引用は、集英社発行 『マリア様がみてる 未来の白地図』 今野緒雪著 より。

『未来の白地図』
 かわいそうに、って思った。
 お家で何があったのか、何が原因で家を飛び出したのか、そんなことはわからない。でも、たとえ全面的に瞳子ちゃんに非があったとしても、寒い中、こんなに遠くまで歩き続けた瞳子ちゃんがかわいそうでならなかった。
(p.36)

親しい年少者のそんな姿を見て「かわいそうに」と思うのは自然なことだけど、「たとえ全面的に〜」の一節でぐっと重みが違ってくる。
とにかく無条件に、その人がつらかったり寒かったり痛かったりするのが嫌だ、って気持ち、すごくよくわかります。

ご飯のシーン、瞳子ちゃん抜け目なし。いろいろ質問するのは基本テクですな。良家の子女としての嗜みなのか、女優としての性なのか。
 瞳子ちゃんは、程よく笑い、程よくしゃべり、お皿の上の料理を気持ちよく食べきるという、お客さまとしては完璧な"おもてなされ"をしてのけた。
(p.42) *"〜"部分は傍点


 そう言って助手席に乗り込む瞳子ちゃんを、家まで送り届けてくれるはずのナイトなのに。柏木さんに、素直に「ありがとう」と言う気分じゃない。
 わかっている。面白くないだけ。
(p.47~48)
 こんな重いものを立ち話している間平然と持ち上げていられるんだ、男の人は。
 柏木さんを倒したって勝てないって言われたけど、やはり祐巳は柏木さんより自分が劣っている部分を発見するたびに嫉妬を覚えてしまうのだった。今度ダンベルでも買ってきて、筋肉をつけてみようか。
(p.53)

祐巳の心情表現はいつもとてもリアルで細やかだけど、柏木さんに関してはいっそう生々しい。もちろんそれは柏木さんが男だからで。男に敵わないのって嫌だよね。ダンベルは方向性違うけど。
私は「女の子の感情が細やかな小説」としてマリみてが好きだから、こういう男性キャラの存在は不可欠だと思ってるけど、男性キャラを嫌うファンの気持ちもわからないではないかな。

 一瞬、「面白半分」とか、「野次馬根性」とか、「ただの好奇心」とか、そういう嫌な単語が頭の中に浮かんだ。そんなんじゃない。そう打ち消したかったけれど、でもそれらの単語と自分の今の気持ちを並べてみても、どこがどう違うのだか境目がわからなかった。
 瞳子ちゃんのことが気になる。教えてもらえるのなら、それらの嫌な単語を引き受けたっていいとさえ思えた。
(p.55)

「境目」。この単語の持つ感触は、『妹オーディション』で由乃さんに祐巳が答えた「でも普通は、そんなこと一々考えないで、漠然と『何となく嫌』とか『よくわからないけれどいいような気がする』って思いながら生きているでしょ」って台詞に近いかな。
境目って難しい。でもその存在を認識して測ろうとするのは立派なことだ。
最後の二文がまた強烈な重さです。祐巳の本来の性格を考えれば、「衝動」に近いものなんだろうけど。ここは柏木さんが冷静に問いを投げてくれて良かったと思う。

「柏木先輩来たなんて、俺、知らなかったぞ。何で呼ばないんだよ」
(中略)
 試しに子機を差し出してみたところ、祐麒はそれを取り上げて、柏木さんの電話番号をさらでプッシュしたというわけなのだった。
「あ、先輩? ちわーっす」
(p.57~58)

いつこんな仲良くなったんだっつか祐麒が柏木さんに懐いたんだ。喜ぶ人がいそうだ。

 二年生の教室に向かいながら、由乃さんと志摩子さんは同時に言った。
「瞳子ちゃんって」
 奇しくもそれは、同じ内容の言葉だった。
「いい友達をもっているわね」
 乃梨子ちゃんと可南子ちゃん。
 そのことを、瞳子ちゃん自身が気づいているかどうかはわからない。
 いや、たぶん気づいている。けれど、気づいていることを知られたくない。祐巳には、そんな気がしてならなかった。
(p.83)

それで正しいんでしょう。瞳子ちゃんは扱い難いけどわかりやすい子だ。
多分元々の気質の上に、同じくガードバリバリだった可南子ちゃんが一足先に殻を破って、しかも祐巳と、姉妹とは別次元の良い関係を築いてしまったから、余計頑なになっていると。
お家のことっていうのはやっぱり……縁談とか来てるのかなぁ。本気で女優の道に進みたいってことかな。

 ――楽しい。
 ミサが始まるまでのほんのわずかな時間でも、二人でクスクスと笑い合える。ただ隣にいるということが当たり前であることの幸せ。
 祥子さまがお姉さまであるということが、うれしかった。
 自分が祥子さまの妹だということが、うれしかった。
(p.86)

あまりそういう「別れ」を意識させること言わないでくれ(TДT)
学生ってすごいよね。すごい濃密な時間を当たり前のようにともに過ごす。高校生って特に。だから高校スポーツは感動するし学園小説はいつもどこか切ないのだ。

 志摩子さんは「何となく」って言ったけれど、きっと違うんだ、って祐巳は思った。由乃さんもそれに気づいて、それで「……ふうん」とその場を去った。
 令さま特製の「市販材料で作る即席ブッシュドノエル」は、もう来年は食べられないから。志摩子さんは、せめて味を引き継ごうとやる気を出したに違いない。これからの日々、事ある毎にこんな風に「卒業」の二文字がちらつくのだろうと思われた。
(p.91)

意識どころか露骨に来た!(TДT)
『いとしき歳月』の涙がまたやってくるのか…。こうやってちゃんと時間の進んでいくところがマリみての醍醐味でもあるんだけど。
「蓉子さまが卒業しちゃう」ってことよりも「祥子さまと祐巳が離れ離れになる」ってことのほうが私にはキツイっぽい。

ミスはっけーん。
可南子ちゃんと乃梨子ちゃんのつないだ手が、実情を物語っている。
(p.95)

可南子ちゃんと瞳子ちゃん、ですね。そのふたりが手をつなぐというのもものすごくありえない感じで興味深いけれども(笑)。

 嫌味も計略も何にもくっついていない素朴な疑問は、ある意味罪だ、と由乃は思った。答える側のこちらだって、おまけに何にもついていない答えを返すしかないからだ。
(p.100)

それは由乃さんも誠実な正直者だからだと思う。由乃さんは常に、真正面から相手と向き合う人物として描かれている。
いまはまだ由乃さんにとっても読者にとっても掴みきれないキャラである菜々ちゃんと、こんな会話のキャッチボールを通して歩み寄っていくのを見るのは楽しいな。

固まった空気をほぐす蔦子さんの采配はお見事。傍観者・第三者としての蔦子さんはほんとに出来が良くて隙がなくて、それもいいけど人間味溢れる笙子ちゃんとのシーンをもっと見たいと思っちゃう。

「あー、でも。ちょっと、らしくなかったかな、って」
 少し前の自分を振り返って、可南子ちゃんはボソリとつぶやく。
「うん。可南子ちゃんのキャラじゃないよね」
 でも、その気持ちがうれしいじゃない? 祐巳は前列の人の陰で見えないのをいいことに、可南子ちゃんの手を握った。
(p.106)

手を握る、それだけで、この会話がどんなに優しいものになることか。もちろん祐巳は微笑んでいただろうし、声にも感謝が表れていただろう。これが例えばメールやチャットだったら? 空気ってたいせつだ。

話の輪に入りたいのに入るのがシャク、という由乃さんの描写も、またそういうところが由乃さんだったりもする。

「参考にはならなくても、相談にはのれるのではなくて? 祐巳さんなら」
 志摩子さんが言った。
「……難しいね」
 果たして自分は、本当に瞳子ちゃんの相談にのりたいのだろうか。そして、相談にのれるだけの器があるのだろうか。
(p.137)

相談にのりたいのかどうかすらわからないのなら、それは確かに難しいね。でも、「その人の力になりたい」「その人が苦しんでいる状態を一秒でも早く終わらせたい」って気持ちは、すごくシンプルな形をしてるんだよね。あとは伝え方の問題。やっぱりそこが難しい。

令さまの他大学進学は普通に驚いた。
でも考えてみれば、それは最もあるべき形だったのかも。知ってしまうとものすごくしっくり来る。
由乃さんが生まれたときから一緒にいて、ずっとお互いを見てきて、だからこそ『黄薔薇革命』や『黄薔薇注意報』みたいなことになって。
 でも、これは令ちゃんのことなんだから。由乃が、令ちゃんのことを客観的になんて判断できるわけがない。
(p.145)
 由乃のこととなると、性格が変わったように見境がなくなることもまた、気づいている。
(p.192)

こういうふたりだから、必要なステップとして。うん、お見事な展開だ。

「由乃さんがそのことを知っているのかどうかわからなかったけれど、知ってすぐに由乃さんに言わなかったのは、由乃さんが知らないはずないって、私が勝手に決めつけちゃったからだと思う。……それは、ごめん」
(中略)
「うん、見た。確かに。もしかしたら、私の名前も呼んだかも知れない。……そうか。ケーキ食べてたあの時か。じゃ、仕方ない。祐巳さんのこと責められないよ。私あの時、何だろうって思ったんだもん。なのに、聞かなかった私も悪い」
(p.148~149)

小気味よいやり取りだなぁ…。
『妹オーディション』の問答でも感じたけど、線の引き方とか越え方とか退き方が絶妙だよねこの子たち。志摩子さんもああいう人だし、次年度三薔薇かなり安泰な気がしてきた。

「……そうだね」
 由乃さんは、やっと笑った。そして、令さまの顔をじっと見つめた。
「私、そういう話は今日より前に二人きりで聞きたかった。ちゃんと話してくれたら、反対なんてしないのに」
「ごめん」
(中略)
「他の人づてに聞くよりましだったのかな。でも、誰よりも早く知っていたかった」
「ごめん」
 令さまは、もう何回目かの「ごめん」をつぶやいた。まるで、その言葉しか知らない九官鳥のように。
 ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。
(p.151~152)

一度目読んだときもうるっと来たけど、『薔薇のダイアローグ』読んでから読み返したら本格的に泣けた。
由乃さんに最後まで伝えなかった理由、令さまの葛藤をを知ってしまうと―由乃さんがこう言うであろうことも令さまは絶対にわかっていたはずだし、何ていうか、「ごめん」が重いなぁと。繰り返して軽くなる種類の「ごめん」じゃない。
どれだけの想いを込めてその言葉を繰り返しているのか、令さまの心情を思うと泣けた。

で、私の最大の懸念だった祥子さまの進学先が、あっさりリリアン女子大だと明かされるわけですが。
黄薔薇のあれのあとだったから、ほんとあっさりだなぁなんて感じていて、『薔薇のダイアローグ』のラストでまた泣くことになるわけだ。

「本当に歩くだけなんですね」
 瞳子ちゃんがつぶやいた。
「へ?」
「何かお話でもあるのかと思ったら」
 一緒に歩きたい。そう言ってついてきたのは、瞳子ちゃんを一人で帰したくなかったから。
 側にいたかったから。
 このまま離れたくなかったから。
 歩く瞳子ちゃんから離れないためには、一緒に歩くしかない。だから祐巳は「一緒に歩きたい」と言ったのだった。
(p.159)

なんか久し振りにどきどきした…。帰り際の空気って特別だよね。
祐巳は基本的にはこういうシンプルな行動を取れる子なんだ。揺れがちではあるけど。だからここまではいいんだけど…。

 ただ、現物の瞳子ちゃんがここにいる。祐巳にとっては、そのことにこそ価値があった。
 瞳子ちゃんのいないところで瞳子ちゃんのことを思い出すと、何だか胸が締めつけられるのだ。
 それはたぶん、瞳子ちゃんに関する新しい記憶が、うつむき加減の寂しい表情や、冷たい手の感触だったりするからなのだろう。
(中略)
 だから、目の前に本物がいてくれるのはありがたかった。そこにいる瞳子ちゃんがたとえ仏頂面でも、コートを着ているのは見える。迷っていないこともわかる。
(p.160)

ここでも描かれる、人と対面することのたいせつさ。

 祐巳は言葉を探した。今、いったい何を言うことが正しいのか、誰かに教えて欲しかった。どうしたら、瞳子ちゃんを救えるのだ。
(中略)
 どんどんと離れていく瞳子ちゃんとの距離。
 どうしたらいいのだ。
 少しだけ触れることができたと思った、瞳子ちゃんの心の深い部分も一緒にどんどん遠くなる。
 どうしたら、つなぎ止めておける?
 どうしたら――。
「瞳子ちゃん!」
 祐巳は叫んだ。
 振り返る瞳子ちゃん。
 ちょうどマリア像を挟むような形で、二人は向き合った。
 祐巳は言った。

「私の妹にならない?」

 自分なりに出した答えが、それだった。
(p.164~165)

あーーー!!(TДT)
なんか…もう…。いつこのシーンが来るのだろうとずっと前からどきわくしてたけど、断られる展開考えてなかったんだなぁ。親しくなるまでスッタモンダしてそれがまだ進行形だったりもするから、全部片付いて大だんえーん、となるかと。
さなかで申し出ちゃうか!
そうか…。こうか…。うん、小説としては面白いんだけど。なんかこたえた。

 何もなかったようにパーティーの輪に戻って笑うことは、とても困難なように思われた。けれど、このままこうして立っているわけにはいかない。
 コートも羽織らずに出てきたのだ。日が暮れて、ますます冷たくなった空気にさらされては風邪を引いてしまう。
 それに、何も言わずに出てきたのだ。ある程度時間が経っても戻らなければ、みんなに心配されてしまうだろう。
 祐巳は、校舎に向かって歩き出した。
(p.169)

マリみてのこういうところすごく好き。
しばしばさりげなく描かれていることだけど、極端な例で言うと『降誕祭の奇跡』の真紀。
悲しみの感情だけに浸っていられない日常や他人の目があるっていう。理性がちゃんと存在感を主張してる。
少女小説や少女漫画のヒロインならぶっ倒れるまで寒空の下にいてもキモチイイかもしれないけど、マリみてはそういう突き抜けたことしないから好き。

祥子さまが待ってくれてるとこ、プレゼント交換の会話、もちろん好き。安心する。このふたりにもいろんなことがあった…としみじみしてしまった。

 その通りだとうなずく。誰でもいいと割り切れたなら、どんなに楽だろう。けれど、瞳子ちゃんがいいと自覚した後では、もうそれはできない。
 瞳子ちゃんより素直な子は、たぶんたくさんいる。明るくて元気な子も。冷静な子も。やさしい子も。面白い子も。無垢な子も。
 でも瞳子ちゃんじゃなければだめなんだ。
 その子が、瞳子ちゃんでないのなら、それらは意味のない賛辞の羅列にすぎない。
(p.173)

すげえ。そこまで言うか。究極。なんかそういう感情(まぁ、一般的には恋愛なんだろうけど)のあり方を全部言われちゃった感じ。
うん。でもそうだよね。「何となく」。そういうものだ。

「でも、切ないわよね」
 祥子さまは、目の下を指で拭って言った。だから祐巳も、無理しなくていいんだ、って思った。
「はい。あの、やっぱりちょっと泣いていいですか」
「ええ」
(p.175)

紅薔薇だなぁ…。何か久し振りに「祐巳っぽさ」を感じた。祥子さまもここすごく「祥子さま」で「お姉さま」だし。
同じく涙で終わった『レイニーブルー』、あのとき祐巳のそばには聖さまがいたけど、一緒に泣いてくれる「姉」がいるだけでこんなにも救われるものなんだな。
それでも落ちたけど。




『薔薇のダイアローグ』
私にとってマリみての肝である「あるあるある、そういう感情あるある」が満載のショートストーリーでした。
令さまが祥子さまに進路を相談するシーンは書かれるのだろうなーと思っていたけど、想像以上のクリティカルヒット。

「それで?」
 お茶をすすってから、祥子が話を振った。
「話があるのではなかったの?」
「え?」
 言われてすぐ、令はびっくりしたが、やがて「うん」と認めた。確かに、自分は祥子に聞いてもらいたいことがあって来たのだ。
「よくわかったね」
「わかるわよ。ただ理由もなく会いたいなんて、あなたが言ってくることないじゃないの。私は、そう言われたらうれしかったけれど」
「……ごめん」
「お互いさまよ。それに、話をしたいと思ってくれたことだって、うれしいのよ」
(p.188~189)

この、何とも言えないふたりの距離感が好きだ。
『人と人との距離』については、特に白薔薇ファミリーを通してはっきりと何度も描かれているのだけれど、ほんとうに組み合わせの数だけ『距離感』というものがあって、もちろんそれは時間に沿って変化したりもして、令さまと祥子さまの距離感というのもまた、とっても気持ちの良いものだと思うのだ。

 結論は、本当はとうに出ているのかもしれない。けれど、最後の最後の所で踏ん切りがつかない。たぶんそれは、戻ろうと思えばまだ戻れる場所に身を置いているせい。いっそ、口に出して後に引けなくなればいい。
「聞いてくれるだけでいい、なんて。虫がいいかな」
「別にいいわよ」
 祥子は言った。
「私に話しているうちに、気持ちが固まるのでしょう?」
(p.190)

あるあるある…。「相談」って基本的にそういうメカニズムだよね。その相手がいる幸せ。

「そうよ。由乃が私のことを真っ正面から見て『なぜ』と聞いてきたら、決心が揺らぎそうだから」
「揺らぐような決心なの?」
「私なりに出した答えは、たぶん正しいと思う。でも、由乃はその決定を覆してしまえるくらい、私の中では大きいの」
(p.199)

あるあるある…。すべては天秤の問題だと。
この一言で、令さまが長い間葛藤してきたことがわかる。考えて、決めて、シミュレーションして、天秤がどっちに傾くのか想像して。大きな決心だけに、何度試してもそっちに傾いてしまう「由乃の大きさ」を改めて自覚するまでに、時間を要したと思う。

 由乃は勝手に手術をして、元気になってしまった。そして令に、もう守ってくれなくていいと言う。
「一生由乃の側にいようと決めていたのに。私は取り残されたの」
 口に出して言うと、胸にこたえた。
 そうだ。由乃に取り残されたのだと認めることが、令はずっとずっと辛かった。
(p.201~202)

あるあ(ry
つらいのは、苦しいのは、「認めること」。
嫉妬や劣等感、対人関係における負の感情の存在を「認める」のは多分誰にとってもイタイことでしょう。それを口に出して誰かに知らせることもまた。つまんないプライド。これがいろんな失敗の元になる。だけど多分持っているべきプライド。それを乗り越えてホントの誇りを得ることができるなら。

 ブレーキを踏んで、祥子が言った。
「二人乗りしましょうよ」
「え?」
「大丈夫よ。ここは私有地なんですもの。お巡りさんには捕まらないわ」
「そうか。そうだね。二人乗りしよう」
 令も思った。祥子と二人乗りをしたい。
(p.209)

このシーンとても綺麗で…彼女らがもうすぐ卒業するのだと、また強く感じた。
完璧なお嬢様として生きてきた祥子さまも、由乃さんだけ見てきた令さまも、互いに初めて持った「親友」でしょう。
それぞれ蓉子さまに見初められ、江利子さまにとっ捕まり、薔薇の館でともに時間を過ごすうちに、自然に関係を構築していったふたり。
多分『パラさし』の由乃さんと祐巳のような「熱い友情の確かめ合い」もなかったでしょう。
志摩子さんが一年下ということもあって、ほんとにふたり、良いバランスでちょっと離れて並んで立っている。
そう感じるようになったのはやっぱりふたりが三年生になってからのことで、その始まりが『いつしか年も』の送辞のシーンだったと思うと……うーむ、緻密だ。いや、自然だ。
人と人とのつながりを、感情の移り変わりを、あるがままに細かなエピソードを描くことで積み上げていく。『パラさし』はそういう意味でも圧巻だったけど、ああいうドラマチックな流れがなくても、こうした手法がとられている限り、私はマリみてについていこうと思う。
令さまが他大学へ進むことで、卒業後疎遠になっていくのは仕方がない。先代三薔薇さま見てもそうだし、現実見てもそうだし。
だけど何年経っても「私は学生時代あんな素晴らしい友人がいた」って事実は間違いなく財産になります。
この時期のお話としてこのふたりのエピソードを書いてくれたことに感謝したい。
しかし自転車のブレーキって「踏む」か?

 うなずいて、ペダルに足をかけると祥子が「令」と呼び止めた。
「何?」
 ゆっくりと振り返る。祥子の口から、白い吐息が吐き出されている。
「私はリリアン女子大に行くから」
「うん」
「他の大学に行って、経済のことを勉強して、祖父や父の手伝いをしようかと思ったこともあったけれど。急ぐことはないから、もう少しリリアンにいようと思うの」
「そっか」
「私は、祐巳がいるリリアンに残るから」
「わかった」
「それだけ」
 宣言した祥子は、すっきりした顔をしていた。
 だから令も気持ちよく手を振って、自転車をこぎ始めた。
(p.210~212)

ああ……。
「あっさり」なんて思った私が馬鹿でした……!
そうだよね。祥子さまも葛藤がないわけないよね。
あの場で祐巳に対してはあっさり済ませたのがまた祥子さまらしい。でもここで令さまにこんな風に宣言していたのが嬉しい。
本編で落ちた気分を、すっきり前向きにして終わらせることができました。
やっぱ好きだな、紅薔薇姉妹……。私も頑張って「卒業」を受け止めよう。


次は4月かな? 本気で待ち遠しい!
posted by あーこ at 19:49 | Comment(5) | TrackBack(0)
★本/漫画★
この記事へのコメント
最近白地図読みました。いろいろなレビュー見ましたが、これが一番良かった。なんか読んでて鳥肌立っちゃいましたwww

2年前のレビューのようですが
感動したぁ!!
Posted by トーコ at 2009年02月05日 17:12

うははははっ!!wwwすんげーパイオツな女の子とちゅっちゅしてきたよ〜!!www
突くたびにブルルンブルルン揺れるのはオパーイ好きにはたまらんwwwww(*´∀`*)
しかもたゆんたゆんのオパーイでズリズリもしてもらったし、キンモヂィィー!!www(ノ*゚∀゚)ノ

http://jam.tsukimisou.net/x7to0fw/
Posted by ボッヨヨヨヨ〜〜ン!!www at 2009年08月08日 12:43

めちゃめちゃ好みな口リフェイスのユキちゃんとちゅっちゅっしてたら
息子が見たこともないくらいガッチガチに膨らんじゃったおwww⇒モリモリ!!(ノ゚∀゚)ノモリモリ!!

ガマンできずにどぴゅどっぴゅしたらユキちゃんの顔がまっちろにwwwwwウププ(´∀`*)
「もーw」とか言いつつも50,000もくれるんだからいいコだよねーヽ(´ー`)ノ
http://OmEtRoRo.com/Puru/auofxli/
Posted by ギ ン ギ ンのバコンバコンwww at 2009年08月23日 04:04

奥さ〜ん!1人だって言ってたのに実は3人でした♪とかちょっと待てって!www
気がついたらプぇラ・ア-ニャ-ル舐め・ディープなキスの三連発にずっとあえぎっぱなしwwwww
家に帰ったら1キロ以上体重減ってたしなwww(ヽ゚Д゚/)ゲソゲソー

ま、3人合わせて2 0 マ ソくれたから大満足だけどねwwwww

http://CUNE.PROTOBEM.com/wg29vvh/
Posted by ぴょぇー!!聞いてないよぅ! at 2009年08月30日 13:14

イカく さ 〜 い!とか言いつつ嬉しそうな顔してじゅっぽじゅっぽってた件(´・ω・`)
ドロッドロなザー●ソを口の中に出してあげたらちゃんと全部飲んでたしなwww

「これは美容にいいの!」って言ってたけどコイツただのザ−●ソ好きだよwww
俺が今までコイツに飲ませたザ−●ソはたぶんペットボトル1本より多いねwwwww

http://cOOl%2eaU-Au-A%2enEt/6ccs-cs/
Posted by なーんだかなぁw at 2009年09月08日 04:19
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